親なるもの断崖ストーリーは単なる戦争悲哀物語でストーリーが終わらないのがこの親なるもの断崖の素晴らしさだ。今まで描かれてきた庶民の戦争、あるいは軍人の戦争というものとは一味違う、日本の底辺にいた人々の戦争というものを見事に一つのストーリーとして描き出した ところにこのマンガの価値がある。 とはいえ、その背後には幾千の「ふつうの庶民」(この親なるもの断崖においては鉄鋼事業に従事する男たち)が存在していて、彼らがまるでものを扱うかのようにお梅や松江、武子たちを扱うさまに心を痛めない人はいないはずだ。そこにも戦争の恐ろしさ、普通の庶民がさらに格下をはけ口としてせめたてていく残酷さがありありと見え、戦慄を禁じ得ない。 お梅はストーリーの後半で会社の重役(といっても本人は現場で働くことを是としている)と結婚し道生というたくましい少女を一人もうけるが、それでも過去の因縁は断ち切ることができず、卑しい元客たちが彼女を襲う。この親なるもの断崖という漫画にでてくる彼ら男たちはとことんまで容赦がないのだ。 そんな中でもたくましく生きる彼女ら女郎、あるいは元女郎たちのストーリーを描いた親なるもの断崖は現代に生きる人間には必読の漫画といえる。